ヤーデのあの曲が特別な曲である理由 〜Variation〜

サガフロンティア2の魅力のひとつは、間違いなくその美しい音楽です。作曲家となった浜渦正志氏のピアノを中心とした美しい音楽は、水彩画のようなグラフィックと相まって、唯一無二の世界観を作り出しています。その中でも特に印象的な曲である「Variation」について考察していきたいと思います。

ファンからも非常に評価の高い曲ですが、この曲にはほかの曲にはない特徴があります。そこで今回は、Variationが特別な曲である理由について触れたいと思います。

ヤーデで過ごした少年期

「Variation」は、主にヤーデで流れることになるピアノ曲です。ヤーデはギュスターヴが鍛冶屋や生涯の友に出会い、そして母を失った重要な舞台です。また、この地を治めるヤーデ伯はナ国への忠誠心が高く、「貴族は弱きを助けるべき」という信条を持っていました。穏やかでありながら、どこか哀愁を帯びたメロディは、ヤーデ伯や母ソフィーを体現しているかのようにするような曲となっています。

ピアノのみで構成された唯一の曲

Variationはサガフロ2の全曲の中で唯一ピアノのみで構成された曲です。それまでサガシリーズの作曲を担ってきた伊藤賢治氏の退社に伴い、初めてサガの曲に携わることになった作曲者の浜渦氏は、プレッシャーやファンの批判などから退社寸前まで追い詰められたそうです。

なぜ自分が選ばれたのか。そんなことを悩みぬいた上で、浜渦さんはすべての曲をピアノにすることを河津さんに提案することになります。河津さんからは却下されるのですが、Variationだけはピアノのみの曲として残ることになります。(ここらへんのエピソードは何かで見た気がするのですが、ソースが見当たりませんでした。僕の妄想かもしれません。)

ちなみに、ゲームの曲になる前にピアノだけで作曲された曲は、「Piano Pieces “SF2” Rhapsody on a Theme of SaGa FRONTIER 2」というアルバムに収録されています。

特殊な音源

サガフロンティア2のハードであるプレイステーションは、スーパーファミコン以前と同様にMIDI音源によって音楽を鳴らすことも可能ですが、CD-ROMを使用するようになったことで容量が増えた結果、収録した音を鳴らすことでよりクオリティの高い音楽を楽しみながらゲームをプレイすることが可能になりました。

ただ、収録した音は大容量のため、数曲入れただけでCD-ROMの容量がいっぱいになってしまいます。このため、収録音を利用した代償として、肝心のゲーム内容が薄くなってしまうことも珍しくありませんでした。

以上のことから、ほとんどのゲームでMIDI音源が利用されており、サガフロ2もMIDI音源を利用しています。しかし、Variationは唯一、一部の音に収録音が利用されています。それは、Variationの最も特徴的な箇所、曲の始まりと終わりのあたりで、ピアノを素早くポロロロンとやるところ(一番上のサンプルでいうと、8時くらいに鳴る音)だけが、MIDIではなく収録音になっています。おそらく、MIDIの打ち込み音源では表現できないリズムだったのだと思います。

厳しい容量制限のもと、削られたマップなどもある中で、美しいピアノの旋律を表現するために容量を割いたというところに、私はこだわりを感じずにはいられません。どんな音か気になる方は、PS版サガフロンティア2のCD-ROMをパソコンで読み込んでフォルダの中を覗いてみてください。音源が入っていたと思います。

まとめ

サガフロンティア2の曲の特徴として、ピアノの使用率が高いことがあると思います。その中でVariationは唯一ピアノのみで構成された曲であること、そして特殊なリズムの再現に収録音を唯一使用していることから、全曲の中でも特別な曲だと思っています。

私にとっても、作り手のこだわりを知るきっかけになった特別な曲です。いい曲なのでぜひ聴いてください。

ヤーデのあの曲が特別な曲である理由 〜Variation〜」への2件のコメント

  1. サガフロンティア2の楽曲について調べていて、
    貴サイトに辿り着きました。
    貴重な情報ありがとうございます。
    これからも更新楽しみにしています。

  2. いつも楽しく読んでおります。
    浜渦さんの曲作りについての経緯は、サントラ(ピアノ版の方)のライナーノーツで読んだ記憶があります。ご参考までに。

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