クヴェルと鋼 ~サガフロンティア2における力の象徴~

考察

サガフロンティア2では、「クヴェル」と「鋼」という二つの要素が物語の中心にあります。

ギュスターヴ編では「クヴェル」中心の術至上主義社会の影の中で「鋼」に希望の光を見出す物語が、ウィル・ナイツ編では「クヴェル」に秘められた闇との戦いが描かれています。

今回は、「クヴェル」と「鋼」の2つの軸でサガフロンティア2の魅力に迫っていきたいと思います。

クヴェルと鋼が象徴するもの

ギュスターヴ13世と鋼の剣

ギュスターヴは術至上主義のフィニー王国に生まれます。

フィニー王国の王としての資質を示すため、ファイアブランドの儀式に臨みますが、ファイアブランドが反応することはなく、失敗に終わります。

ファイアブランドはアニマの強い大人が触れればアニマが暴走してしまうほどにアニマへの感応が強いクヴェルです。そのファイアブランドが全く反応しなかったことで、ギュスターヴには「アニマ」が全くないと考えられるようになります。

サンダイルの世界において「術」は日常生活に深く浸透しており、その「術」を使うための「アニマ」は「魂」と同一視されています。

「アニマ」が無ければ「術」を使用できない役立たずであり、「アニマ」が無ければ「魂」が無い。ギュスターヴが王族でありながら「術不能者」であるという事実は、彼を孤立させるのに十分でした。

母のソフィーはギュスターヴを守るため、フィニー王国から亡命し、自らに対して邪な想いを抱いているナ国のスイ王に保護を求めることになります。

母に辛い思いをさせ、弟妹から母を奪うことになったギュスターヴは、周りの奇異の目にさらされながら、異国の地で屈辱に耐える生活をしていました。そしてとうとう、ソフィーは異国の地で流行り病に倒れることになります。

クヴェルの力に頼ることのできないギュスターヴは、人間の発明した「鋼の剣」を携えて、その運命と戦う人生を歩むことになります。

ウィル・ナイツとエッグ

ウィル・ナイツをはじめとするディガーにとって、クヴェルは見つけるべき「宝物」です。クヴェルは無尽蔵に術を放つことができる極めて強力な術具です。

ディガーは過去の遺物であるクヴェルを掘り当てることで生計を立てており、中でも危険なメガリスを踏破しクヴェルを持ち帰った者は「タイクーン」と呼ばれ敬われ、名声を一手に受けます。

一方でディガーは、クヴェルのもたらす危険にいつもさらされています。

あふれ出るアニマが無尽蔵に人間に注入されてしまうと、そのアニマを包含できるようその姿形が変形してしまいモンスターと化してしまいます。これを「アニマが喰われる」といいます。

中でも凶悪なクヴェルが「エッグ」です。ウィルの父ヘンリーとゼルゲン三兄弟が発見したこのクヴェルには、滅びの定めにあった先行種族のアニマが封じられており、後の世で自らの封印を解くほどの知性を持った種族に成り代わって蘇らんとしています。

このエッグは触れただけでその人間のアニマを喰らいます。姿形こそ変わりませんが、自らの操り人形にして先行種族を復活させようと活動させます。

これは強い自立心を持つリッチ・ナイツですら例外ではなく、自ら崖下に身を投じることでエッグの支配から逃れましたが、落下の最中もエッグから手を放すことができなかったほどです。

クヴェルは先行種族の遺産として強大ではあるものの、制御が難しく、依存しすぎることのリスクを象徴していると考えられます。過去の力に頼るだけでは未来を切り開けないというメッセージが、ここに込められているのかもしれません。

クヴェルと鋼が示すもの

クヴェルは遠い昔に栄華を極めた先行種族の遺物であり、それがもたらす恩恵を全人類が享受しています。その一方で、クヴェルには深い闇が秘められています。

その象徴となるエッグにトドメを刺すことになるのは、ギュスターヴの鍛えた鋼の剣でした。

過去の遺物である「クヴェル」に、人間自身の力を象徴する「鋼の剣」が決着をつけることになったのです。

最後には自らも折れてしまうその姿は、まさに自分自身の力で運命を切り開いてきたギュスターヴそのものなのです。

だから、最後のシーンに感動するのだと思っています。

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